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成果主義の場合、当初は各個人が持っている力を一〇〇パーセント出すようになれば業績は必ず上がるといわれていました。
一〇〇パーセント発揮することができれば業績は上がるだろうけれど、それをどういう形で評価するかについて、実際にやってみたら、問題がかなり出てきました。
一〇〇パーセントの力を出すどころか、みんなサボリ屋みたいになってしまった。
先にもいいましたけれど、教えないというスタンスが普通になっている。
多かれ少なかれ、評価が給与に反映されるのなら、クリアできる目標にした者が勝ちといった考えが出てくるのは当然のことです。
それはちがうんだと導入した人事部門などは懸命になって否定しますが、事実に基づいた根拠が出てこない。
心理的な考察さえない。
上澄みをくすねた者が勝つような土壌からは、きちんとしたものは生まれない。
成長も期待できない。
だから成果主義の実情をよく見て、考えてもらいたいのです。
Q評価方法を修正すればいいのでしょうか。
A評価の仕方を修正するだけでよいなら、修正に修正を重ねて、プラスの業績をきっちり出すような企業体が多数出てくるはずです。
そうでしょう?でも出てきませんね。
それならシステムそのものに欠陥があると考えるのが妥当でしょう。
Qこころの病は、単に長時間労働や職場だけに原因があるわけではなく社会全体の問題だとなると、そこを変えていかないと解決はしないと思います。
そのためにいま、何が必要とされているのでしょうか。
A一にも二にも「大人の反省」だろうと、ぼくは思っています。
「自分最優先」は若い人たちだけではなくて、大人が総じてそうなってきています。
子どもや若い人たちが、いまの大人たちを見て失望する場面はものすごく多いと思う。
成果主義が導入されたことで、大人たちはますます「自分最優先」になってしまった。
するとわからないことも教えてくれない、自分のことしか考えていない、と若い人たちの目には映る。
「大変だよねと大人はいうだけで、全然力になってくれない」と若い人たちは思っている。
大人たちがそうしたことをやっていたのでは、社会はよくならない。
就職氷河期もそうです。
たしかにバブルは弾けたけれど、どの業種もどの企業も、一斉に採用制限する必要はなかったのではないかという気がしている。
なんとなく周りを見て、よそがやっているからうちもやろうと決めていったところが、実際には多かったのではないでしょうか。
だとしたら、打開策を自分の頭でしっかり考えなかったわけですね。
そしていま、何が起こっているか。
企業でもひと世代、まるごと抜けてしまっているところがあるわけです。
実際に困っているのは企業そのものです。
国民生活白書によれば、受け渡す柏手がいないと感じていた団塊の世代が多い。
受け取る人がいなければ、技術の伝承はできません。
企業体から地方自治体まで、それまできらきら輝いていた魅力があせている。
やる気が出てこないからです。
個々人がバラバラで不安も増しているからです。
共栄共存のスタイルを取り戻すには、足かせになっている要素を見直すことです。
中の問管埋職が元気を取り戻すためにも、成果主義のような計画至上主義をなんとか外したい。
緻密な計画を立てたところで、所詮はやってみなければわからないわけです。
そのためには、計画よりも臨機応変というか、フレキシブルな姿勢が求められる。
軽快なフットワークといってもいい。
それを一年間必死になってやってみて、まだ修正する部分が多々あるという結論になったら、上司も部下も一緒になって考える。
上司の経験や若い人の嘆覚は、そういうときに活かされるのではないかと思っています。
ともあれ企業体も自治体も教育機関も、すべては社会貢献のためにあるはずです。
生活物資がこれだけ豊かになっても、こころが虚ろになっている。
社会貢献するためには自分最優先の姿勢を捨てて、垣根を取っ払って、人間同士がしっかりと手を結ぶことが大事ではないでしょうか。
それには次元の低い駆け引きを、お互い捨て去りあうことです。
さして意味がないことに対してどれほど時間を割いていたか。
それを、原点に立ち戻って、もう一度考えて欲しいのです。
インターネットの普及による人間関係の変化人間関係の再構築に必要なもの、というのが、序章に掲げたインタビューのテーマだった。
でもインタビューの後半は、人間関係の再構築というより、ひとりの人間が働く目的や、働く職場環境の再構築といった視点に、テーマがシフトしている。
それは人間が社会を築き、築いた社会環境のありようが人間関係を規定すると、ぼくが考えていたからだろう。
情報が張り巡らされた社会そのものが、人間関係にもさまざまな影響を与えている。
たとえばインターネットによる買い物は、売り手と買い手がひとこともことばを介することなく売買する行為を可能にした。
インターネットによるメールは、見知らぬ相手に胸のうちを打ち明けることさえ可能にした。
胸のうちを明かすのは、知っている人より知らない人のほうがたやすいといった意見もある。
ある若い人はネットでメールのやりとりをして「知り合い」、オフ会で「出会い」、その人とお茶をし、その人の白日宅に招かれ、ある商品を買うよう勧められた。
それまで知らなかった相手との距離が急速に縮まった埋由は、「わたしの意見を親身になって聞いてくれたから」と語った。
いわく、「悪徳商法ではないかと家族からいわれたが、出会う人をその都度疑っていたら、友だちになどなれない。
現在、友人がひとりもいないわたしにとって、せっかく得た友を失いたくない」。
二週間たらずのうちに交流を深めたという相手のことを、若い人は「友」と呼んだ。
インターネットは、人間同士が出会うありようを変え、人間関係や信頼という概念にも影響を及ぼしていることが、この話からわかる。
ともあれ現代の人間関係を考えるとき、社会のなかに居座るようになった情報網という社会環境は無視できない。
転職に悩む若い人たちへのメッセージとして序章を置いた理由は、現代の職場環境や、職場を取り巻く社会環境が深く関与していると考えたからだ。
一人ひとりの転職理由と向き合うことも大事だろうが、働く場や社会の環境に変化が生じていることを、いま一度確かめたかったのである。
そこでこの章では、転職を考える人たちを取り巻いている職場環境の要素をぎゅっと見渡してみようと思う。
新卒者を複数年採用しなかったことが、組織体に苦しみを与えている。
たとえばある銀行の中核地方支店では、三〇歳の周辺が九年にわたって「いない」。
どういうことか。
「従来であれば三〇歳前後になったとき、渡せていた仕事があった。
渡す相手は部下だが、いまはその部下がいない。
だから渡せないまま自分ひとりが処理するようになる。
しかしそれでは本業が勤まらないから、そのうちアウトソーシングされた派遣さんに渡すようになっている。
時間が経つと、その業務は派遣さんたちに一任されている。
いわば丸ごとの請負業務の受け渡しは、派遣さん同士がするようになる。
そうした仕事が増えてきている。
止社員はいずれ不要になるのではないか。
少なくとも業務に濃淡があるという理由で、これは正社員の仕事で、こちらは非正社員の仕事だという説明ができなくなっている」このような事情は、格差問題にも発展している。
「同じ仕事をしていて、正社員と派退社員では、給与にこれだけの差が出る」という特集が、ビジネス誌から大衆雑誌まで年に何度も繰り返して打たれるようになった。
雇う側は仕事目盛が増えたときに労働者を募る。
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